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PAオペレーターに聞く

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プロフィール

岩倉純

岩倉純

北海道出身。高校卒業後上京。
1998年、専門学校ESPミュージカルアカデミーに入学し、PAの知識と技術を学ぶ。
2001年、(株)東京三光に入社。ジャニーズのコンサートをはじめ、コーラス・グループ「サーカス」、田原俊彦、水森かおり、THE HIGH-LOWS、「服部克久と東京ポップスオーケストラ」等のステージをサポートしている。
吉田翔子

吉田翔子

福島県出身。高校卒業後上京。1998年、専門学校ESPミュージカルアカデミーに入学し、PAの知識と技術を学ぶ。
現在、フリーランスのPAオペレーター。おもにライブハウスやイベント等の会場において、数々のバンドのサポートをしている。
PAって何してる人?という興味から、勉強してみようと…
-PA会社に就職した岩倉さんとフリーの吉田さんとでは、仕事の内容に違いはあるのでしょうか?
岩倉対談僕の場合は、ドームやアリーナのような大きな会場がメインになるので、仕事もチームプレイなんです。おもにチーフクラスの人が卓を操作して(ハウスミキサー)、二番手の人がモニター(モニタミキサー)をやり、三番手の人がステージまわりの仕事(ステージマン)をして、それで仕事がまわるんですけど、東京ドームクラスの会場だと6~10人のチームを組んで行くことが多いですね。音響機材を持って行き、セッティングからバラシ(撤去作業)までが仕事の範囲になるんですが、そのへんがフリーの吉田さんとは、ちょっと違うよね。
吉田 そうだね。私の場合は身ひとつで現場に行って、そこにある機材を使って仕事をするから、 おもにオペの仕事(ハウスミキサー)が中心になりますね。
岩倉チーフクラスの仕事ですね。僕らが何年もかけて上りつめるところを、彼女はいきなりやってるわけですよ(笑)。
吉田私だって、それまではいろいろやりましたよ~! モニターだったり、ステージマンだったり。でもやっぱり岩倉くんは男だから、機材の搬入もできると思うんだけど、女の私は力もないし。だから私はPA会社に入るより、違った方法で自分の能力を試してみたいという思いもあって、フリーという道を選んだんです。
-PAの仕事に興味を持ったきっかけは?
吉田小学校から高校までブラスバンド部でサックスをやっていて、音楽はずっと好きでした。 高校生になってライブとかに行くようになると、客席の後ろの方にPAブースがあって、オペレーターがいるじゃないですか。「この人は何をやってるんだろう?」って興味から専門学校に行ってPAの勉強を始めたんです。
岩倉僕も高校1年からバンドを組んでライブもやってたんですけど、やっぱり音に興味がありましたね。 「PA機材って?」というところから専門学校に。
ジャニーズの現場は大変なんです!
-PAオペレーターになるには、どんな勉強をするの?
岩倉専門学校では、機材の名前、使い方、音が出る流れ、電気の知識、業界用語、専門用語などを習いました。学校でも実践はやるけど、実際に現場に出てから覚えることの方が多いかな。「あの時、学校で習ったことは、こういうことだったのか!」って実感するのは現場に出てからという感じですね(笑)。
吉田学校でいろいろと研修に行くんですけど、私はライブハウスに研修に行って、今もライブハウスの仕事が多いんですが、私の場合は、フリーで仕事をしている先輩にいろいろ教えてもらったりもしました
岩倉僕も、今の会社は研修で行ったところなんですが、研修2日目でいきなり大阪ドームのジャニーズに行かされたんです。うちの会社では、そこで使える人材でないとダメだということで、一番大変で、一番頭を使わないといけない現場に、最初に行かされるみたいなんですけどね。仕事的には全然ついていけなくて、自分の力不足をすごく感じましたけど、とにかく「すげぇ!おもしろい!」って思ったことを覚えています。KinKi Kidsのツアーだったんですけど、スタッフの数もすごいし、その規模が自分の想像していた以上だったんで、それに自分が関わってる、ってことが嬉しかった。
-ジャニーズの現場はそんなに大変なんですか?
岩倉ドームのような大きいところだと、スピーカーから出た音が届くまでに時差ができるんですよ。客席まで降りてきたり、スピーカーの前とか、ありえないような位置で歌ったりもするから、アーティストにイヤーモニターを着けて、音をワイヤレスで飛ばすんです。イヤーモニターというのは、要は体に着ける受信機なんですけど、これがあると自分がどこにいても、声が時差なしで、リアルタイムで聞こえるようになるんですね。多い時にはこれを20本ぐらいワイヤレスで飛ばすんですが、それぞれの電波が干渉し合わないように、ちゃんと管理しないといけない。ハンドマイク20本に、それぞれイヤーモニターがついて、さらにヘッドセットも使って、それからジュニアもいるから、誰でも使いまわせる予備マイクを何本か用意して……、となるとマイクだけでもすごい数になるので大変ですよね(笑)。
-何かトラブルに遭遇したことは?
岩倉
細かいトラブルはいろいろありますが、なんとか対処できますね。前にV6のコンサートで、MC中にワイヤレスマイクがバツバツいってて、チーフから「マイク替えてこい」と言われてステージに上がったんですけど、メンバーの三宅健くんにつかまってしまって……。「何歳ですか?」って聞かれたり、いろいろいじられて、もう帰してください、勘弁して……、って感じで、それが僕的には一番のトラブルっていうか、イヤな思い出ですね(笑)。
-そんなふうにアーティストと話す機会もあるんですね(笑)。
岩倉
楽屋で話すこともありますよ。イヤーモニターは衣装の中に着けるので、楽屋まで着けに行くと、たまに向こうからしゃべってくれることもあります。僕は岡田准一くんと同い年なんですけど、「へえ~、同い年なんだ」とか、岡田くんと話したこともありますね。でも最初は、もっとアーティストと密な感じで、音楽性のことなんかを話し合えるのかなと思ってこの世界に入ったんですけど、そういうことはあまりなく……、まあ、祥子ちゃんの場合はまた違うんだろうけど。
吉田私はバンドさんとの距離はすごく近いよ。バンドさんとは仲よくやってますね。今日はこうしてほしいとか、向こうから要望を出されることもあるし、逆に、私が客観的な立場で彼らの音を聞いているので、本人たちが思っているようにはお客さんに伝わっていないというのをディスカッションしたり、この曲はもっとこうした方がいいよとか、そういう会話もしますね。
アーティストの求める音を実現させるのが、私たちの仕事
-専属のPAさんがいるアーティストも多いと聞きますよね。
対談吉田そうですね。私もバンドさんの専属という形でやってます。基本的にはアーティストやバンドさんが求めている音を実現させるのが、私たちの仕事だから、やっぱりバンドさんから「今日はやりやすかった」と言われると嬉しいし、私のようなフリーの場合には、そういうところから次の仕事につながっていくこともあるので。
岩倉やっぱり音は目に見えないので、その音をどう説明するか、自分の求めている音を知っている人の方がやりやすい、というのはあると思いますね。例えば「ボアボアの音にして」って言われた時に、長年一緒にやっている人なら、「ああ、いつものあの感じね」ってわかるんだけど、初めての人には、どんな「ボアボア」なのかわからない。
吉田長くやってると、表情から状況がわかるようにもなるしね。
岩倉うん。歌いづらい時はこういう表情をするとか、そういうこともわかってくるからね。
-初めての人と仕事をする時には、どんなところに気を配るのですか?
岩倉どんな音にしたいのかを探りながら、まずは可もなく不可もなく、標準的な音作りをして、 そこから言われたことに対して、さらに作り込むといった感じかな。
吉田その人のCDの音に近づけたりとかね。
岩倉そうだね。CDに比べて、ボーカルがこんなにぼんやりしてなかったとか、ハイハットの音がこんなに痛くなかったとか、そういうのを比べていくと、違うところが見えてくるので、いつも通りに聞こえるように音を調整していく感じですね。
-ちなみにアーティストの求めている音が、あまり良くないと思ったことは?
岩倉それはあります(笑)。でも、そうしてくれと言われれば、そのようにします。ああ、なんか、ボーカルがぼーっとして聞こえませんねぇ、みたいな(笑)。でも、その人が、それでいいと言うのであれば、それでいいと。あと、いろいろ言われて収拾がつかなくなりそうな時には、できるだけ要望に応えられるようにはしますけど、それをやってしまうと他の音が聞こえなくなるとか、バランスが悪くなるとか、そういう限界がある時は、これ以上はできませんとはっきり言います。そういう微妙な加減が、せめぎ合いでもあるんですが、それを上手に伝えるのも仕事のうちだと思ってますので。
体感できる“生の部分”を大事にしていきたい
-この仕事をやっていて良かったと思う瞬間は、どんな時ですか?
岩倉PAの仕事は拘束時間が長かったり、いろいろ大変な面もありますけど、ステージを通して、鳥肌が立つような感動的な場面が必ずあるんですよ。アーティストのステージングが素晴らしいからなのか、PAの腕がいいからなのか、それはわからないけど、とにかくお客さんの反応が「わーっ!」とあって、そんな時に、この仕事をやっていて良かったなと本当に思いますね。
吉田そうですね。あとは楽日(公演の最終日)とか。10本とか20本とかのツアーがあって、それが長ければ長いほど、地方をまわりながらやっていく中で、明日はこうしようとか、バンドも徐々に良くなっていくし、そういういろんな積み重ねがあって、最終日を迎えるわけです。楽日はツアーの集大成を見せる場でもあるわけで、それが成功した時には、すごい達成感がありますね。
-それでは最後に、今後のPA業界について思うことを聞かせてください。
岩倉間違いなく、デジタル機材は増えていくと思います。今まではアナログで、卓につまみがたくさん並んでますけど、それがデジタルになると画面上でできるようになるので、そういう操作性の面では、今までと多少違ってくると思います。
吉田新しい機材にも対応できるように、普段から情報を集めたり、勉強しておかなくちゃいけないというのはありますよね。これから機材はどんどん発達していくと思うし、コンサートもどんどんショーアップされて、大掛かりなものになっていくと思います。でも、ライブハウスのような空間が好きで来てくれるお客さんは、アーティストを身近に感じながら、その音圧とか、実際に体感できる部分を求めて来ていると思うので、今後、どんなに機材や録音技術が上がったとしても、そういう生の部分は残して、これからも大事にしていきたいと思うんです。
撮影協力:専門学校ESPミュージカルアカデミー